サブナノ粒子の構造解析と原子ダイナミクス

金属サブナノ粒子の合成と物性の理解が進む一方で、その構造解析は長らく難航していました。その理由はサブナノ粒子が持つ特有の構造流動性にあります。サブナノ粒子は結晶構造をもたず、その構造は時間とともに常に変化し続けるため、X線回折のような無機物質の一般的な構造解析法が適用できません。私たちはこの点に大きな課題意識を持ち、球面収差補正電子顕微鏡を活用したサブナノ粒子の構造研究に取り組んできました。

高次収差を補正した最先端の原子分解能電子顕微鏡を用いると、取得した原子分解能動画をもとに粒子の構成原子数を直接数えることができ、鋳型合成法で得られた担持金属サブナノ粒子が厳密に設計したサイズで維持されていること実証できます。また、電子線励起によって発生する特性X線を電子顕微鏡に装備された2つのX線検出器観測することで、多元素合金サブナノ粒子の単粒子原子組成分析が可能になります。電子顕微鏡は現在担持クラスター研究のスタンダードになっており、革新的な触媒や超原子のような先端機能材料の開発に利用されています。

環状暗視野走査透過型電子顕微鏡像(ADF-STEM)で観測できる原子の輝度は原子番号(z)に依存する性質があります。動いている原子をフレームごとに画像解析により追跡し、つなぎ合わせることによって各原子の散乱強度を積算することができ、元素の識別精度を高めることができます。この方法によって初めて実空間における多元素原子配列構造のリアルタイム可視化が可能になりました。20種類近い未知の同核、異核金属二原子分子を発見したことに加え、AuAgCu三原子分子の観測にも初めて成功しました(Nature. Commun. 2022)。

さらに通常は絶対に混ざり合わないZr酸化物とPt金属という異質な材料同士が、正則溶液に近いレベルで均一に混合することを発見しました(Angew. Chem. Int. Ed. 2022)。このいわゆる「サブナノ超相溶効果」は多くの元素組成に普遍的であることを原子レベル構造から解明しています。

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